従業員を個人事業主にする場合のメリットや危険性


美容室などでよく見られる「もともと従業員だった人に個人事業主になってもらう。」という手法。

この手法自体に違法性はありません。

しかし、雇い主にはメリットしかない従業員の個人事業主化(*)は、相手にとってはメリットもあればリスクもあるので、その点を十分理解してプランを進めたいところです。

(*)個人事業主化・・・個人事業主は自らの意思でなるものであって、会社側が強制的に事業主にすることはできません。要するに、話し合いの末「なってもらう。」ということです。

最近タニタも話題になりませんね。うまく運用されているのでしょうか・・・


出典:amazon.co.jp

雇用主のメリット

社員を雇用する側として、社員が個人事業主になることで得られるメリットは、なんといっても様々なコストが削減できることでしょう。

例えば、Aさんを月給20万円で社員を雇っている場合、次のようなコストが発生します。

Aさん:月給20万円
+約32,000円(雇用保険+厚生年金+健康保険)

そうです。社会保険料がバッか高いんですよね。

もし、Aさんを個人事業主にすると、会社側は20万円ぽっきりで済みます。

つまり、これまでAさんに23万2,000円がかかっていたところ20万円に下げることができるわけです。年間だと384,000円のコスト削減になるわけです。これは大きいですよね。

さらに、従業員から、住民税や税金などを給料から天引きして代わりに収めるという、これもくっそ面倒くさい作業からも解放されます。

メリットしかないのがお分かりいただけると思います。

従業員にとっては地獄になる危険性

問題は、会社側のメリットだけを考えて従業員を個人事業主化にしてしまうと、事業主になった側は地獄になる危険性があるので注意が必要です。

個人事業主になっても、会社と良好な関係をたもって、お互いにメリットがあるような着地点を目指す必要があります。

そのためには、「個人事業主になるとはどういうことか?」から始まり「金銭面での変化」についての具体的な説明なども、してあげることが大事と言えます。

「個人事業主になる」というのは、文字通り「雇われ」ではなく「自らの意思で事業を行う者」ということなので、その点に関しては、深く説明する必要はないでしょう。

でも、「金銭面」の話は、具体的数字を使ってしっかり説明してあげないと、悲惨なことになりかねないので注意したいところです。

悲惨なパターン

一方、従業員側は事業主になることで得られるメリットはなんでしょうか。

ひとつは、「命令を受ける必要がない。」ということです。

従業員のときは定時で上司の命令に従って働いていたわけですが、これがなくなります。

簡単に言えば、雇用契約から委託契約に変更されるわけです。

美容師なら、「場所は貸すので自由にカットしてください。」といった感じです。月額契約料は20万円。

ただ、もと従業員だと、どうしても上司部下の関係性は残るので、結局、「事業主」というのは名前だけで、「命令を受けて長時間労働させられ社員のときより割が悪くなった。」というオチになります。

まあ、立場が弱い状態で個人事業主になると悲惨ってことですね。

逆に、対等な立場で契約できる場合は、メリットもいろいろあります。

個人事業主になるメリットと危険性

社員から個人事業主になることで得られるメリットは、なんといっても支出のコントロールができるようになるってことでしょう。

具体的には、「税金各種」や「社会保険」などの支出を、確定申告をすることで、社員の時より安く済ませられる可能性があるということです。

これをわかって独立する人には、問題は起きませんが、「税金や社会保険料が安くなるしくみ」をわかっていない人にとっては、かえって負担が増えてしまう点は説明してあげる必要があるでしょう。

例えば、ざっくりとした計算ですが、こんな感じです。

Aさんが社員のときは年収240万円。課税所得は240-90=150万円

Aさんが事業主として売り上げ240円の場合の課税所得は「経費」にかかっています。

なので、交通費や備品や必要なもので年間の出費が90万円に満たない場合は、逆にAさんの課税所得はあがってしまって、支払う税金、保険などが社員のときより増えてしまう恐れがあります。

経営者側がこの件にかんして十分理解した上、説明して納得してもらえる場合は、従業員を個人事業主になってもらっても良いでしょう。

でも、会社側のメリットだけで突き進むと、関係性にひびが入りトラブルになっても仕方ないかもしれません。最悪、訴訟なんて話になると、意味のないお金と時間を捨てることになります。

経営者は勉強を

会社が負担する正社員の社会保険は年々上がってきています。

できればなくしたいし、減らしたい。どこの経営者も考えることは同じです。

ただ、上記の例のように、会社の都合だけで従業員との契約関係を変えてしまって、こちらは良くても社員側が不幸になるというのは絶対に避けるべきことでしょう。

そのために経営者は法務関係、税金関係のことをしっかり学んで理解する必要があると思います。

不親切な社労士などが「従業員を事業主にするとコスト削減できますよ。」と片面のメリットだけをささやいて仕事を取るようなケースもあるようです。

でも、実際は、大きなデメリットになりうることも隠れてる点は忘れたくないものです。